体癖という言葉をご存知だろうか。野口晴哉氏が提唱したこの体癖は、身体の癖や感受性の方向性によって人間をタイプ分けした研究結果から来ている概念である。この本は医学書のようで理解が難しいところも多く、読み終わるまでに時間を要した。個人的には、野口さんが体癖を研究するうえで被験者に対して行った言動が悪魔的で面白いのでぜひ一読を勧めたい。
さて、感受性の方向性とは一体どういうことだろうか。例えば、誰かから何か不本意なことを言われた時に、本人にはストレスが溜まる。その溜まったストレスがどのように発散されるのか、また発散されない場合は身体のどこに不調が出るのかといったことがこの体癖によって決まっているのだという。感受性という言葉を使っているが、それは「性格」と言ったほうが分かりやすいかもしれない。生年月日による性格診断が現代では主流だが、身体の癖から見る性格診断のようなものである。もちろん、性格診断以外の要素も含まれてはいるが、タイプ別のなりやすい病気や、感情と繋がっている器官がどこなのかということなどもこの体癖から分かるのだと言う。
体癖は1〜12種まであり、人は1つの体癖を持っているのではなく、1〜12種の体癖を組み合わせて持っている。メインとなる体癖1つと、サブとなる体癖をいくつか持ち合わせており、メインとサブを合わせて多い人では上限7つまで体癖を持っている。ちなみにわたしはメインとサブ体癖を合わせて3つ持っている状態である。
これは持つ数が多ければ多いほど良いという話ではない。体癖を100%とした場合、どのタイプの体癖が何%を占めているのか、というイメージを持ってもらえると一番近いと思う。わたしの場合、メイン体癖が4種、サブ体癖は3種と5種という組み合わせなのだが、メインだけ少しばかり割合が大きく、3つとも割と同じくらいの割合を持っている。だが、もしわたしと同じ組み合わせの体癖を3つ持っている人でも、例えばメインを50%、サブを25%ずつ持っているという人もいる。人により組み合わせも、割合も様々なのである。
1〜12種の体癖にはそれぞれ特徴や性格、身体の傾向などが分類分けされている。1〜12種のうち、奇数の種は「陽」、偶数の種は「陰」として区分が分けられている。奇数のタイプがメイン体癖の場合、自身が持つエネルギーを外へ向けて発散(鬱散)し、偶数のタイプがメイン体癖の場合は、外からのエネルギーを自身に溜め込み鬱滞させるという特徴がある。
1種・2種(上下型)/3種・4種(左右型)/5種・6種(前後型)/7・8種(捻れ型)/9種・10種(開閉型)/11種・12種(過敏・遅鈍)と1〜12を更に分類に分けると6つに分けられる。1種・2種が陰と陽で背中合わせになっているようなイメージである。1種・2種はそれぞれエネルギーの鬱散鬱滞の方向性などは異なっているが、感受性が反応する器官が同じである。詳しく見ていこう。
1種・2種は上下型と野口さんは定義しており、このタイプは重心が前に来ている。1種は上半身がしっかりしており、首が太いことが特徴であるようだ。野口さんいわく、「上下型というのは頭の中に過敏反応が起こって、頭の中で鬱散してしまえばそれでいい。そこで終わりなのです。だから計画はあるが行動はない。(中略)そういう人は頭に流れる血液の量が多くなるから、どうしても首が太くなってくる(p.100)」と言っている。
体癖1種は頭の中でぐるぐると考えることがエネルギーを鬱散させる方法なのだという。頭がたくさん動いているので、頭に血液がたくさん流れることで首が太くなっていると野口さんは本書で言っている。そして1種は脳の働きが関係しているのだろうか、自身が確信したことをし続けることで長生きできるのだという。例えば、1種の人が酒を飲めば長生きできると思いこめば、本当に長生きするのだとか。
この野口さんの悪魔的な研究の一部が1種の中に書かれていて面白かった。野口さんは1種の人に向かって、枝豆やたけのこを食べると身体を壊すと伝えたそうだ。1種の人たちは、これまで食べてきている食べ物を急にやめろと言われたので「そんなことはない」と言ってくるのだが、野口さんに言われた後に1種の人が枝豆やたけのこを食べると、本当に身体を壊してしまうという。頭がよく働く分、思い込みが身体とリンクしやすいと言っても過言ではないだろう。
1種の場合は「こうすれば健康的である」という思い込みにより、普通に考えると身体に悪いことでも健康法になることがあるという。逆もしかりであり、「こうすれば身体が壊れる」という思い込みが本当に身体を壊してしまう。だが例外として、そんな中でも睡眠を削ることだけはどうしても我慢できないのだという。「睡眠を削れば健康的になれる」と言っても思い込みが入っていかないようだ。
頭はよく働いているので計画を立てさせるとバッチリであるのだが、1種の人は計画を立てたら満足してしまい、行動には移さない。1種の人に主体となって行動してもらうと上手く行かないのだとか。組織にいたら、その組織の頭脳として働くのが一番の貢献になるのかもしれない。
続いて2種体癖を見ていこう。2種も同じく思考と身体のリンクの仕方が尋常ではない。2種の人への実験でもまた、野口さんの悪魔的な実験が出てくる。2種で脈が正常な人に対して、野口さんが「あなたの脈は4つ目に飛びますね、ご自身でも確認してみて」というようなことを伝えたそうだ。正常な脈をしていた2種の患者は、自分で測ってみると確かに4つ目に脈が飛んでいるような気がしてくる。そして”気がしている”状態だったものが、本当に脈が飛んでいってしまうのだという。
1種と同じく2種も脳が動いており、こういった暗示にはかかりやすい傾向と言えそうだ。だが、2種の場合は上記の脈の話のように、心臓に対して影響が出やすい。そして胃に対して影響を及ぼすような暗示にも特にかかりやすいのだという。脳の緊張状態が胃へ影響しやすいのだ。食欲が無くなったり、胃が痛くなったりする。1種と2種は区別がしにくいが、見る夢の内容と身体の特徴を照らし合わせて野口さんは区別をしていたそうだ。能動的な夢か、受動的な夢かという内容でも判断できるという。(続く)
(※)参考文献・出典
野口晴哉著、2013年「体癖」、筑摩書房
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