未来日記(1)

生澤愛子との生活
Aiko Ikizawa「四葉展」2016年

 未来に向けての願望を書く時に、「〜になってほしい」「〜がしたい」という願望形で書くのではなくて、もう既にそれが叶ったという状態を記載するのが良いと言っている人は多い。「〜ができた」「〜をした」というように過去形で書くことで、既にそれが手に入った状態というのを潜在意識に刷り込むという目的だと聞いたことがある。願望形で書いてしまうと、それが手に入っていない状態ということを受け入れてしまうので、その願望までの距離が遠くなってしまうということなのだろう。

 また、前祝いの法則を説いている人もいる。ひすいこたろうさんはYouTubeで、もう既にそれが叶ったということを想像して先にお祝いをするとその願望が本当に実現すると言っている。願望が叶った状態になりきる、ということが大切なのかもしれない。

 愛子も、達成したい現実を引き寄せるにあたって未来日記というものを書いていたそうだ。これは2020年のころの話である。愛子は実験で、「感情を込めて未来日記のようなものを書いたら現実になるんじゃないか」とふと思って実践してみたそうだ。そのころの愛子は、今でこそレギュラーの作品となっているキューブ作品などを多数つくって手元にある状態だが、さあどうやって売っていこうかと思っていたタイミングだったそうだ。実験的に、未来日記には「作品が突然売れるようになる」というような内容を書いた。

 するとその2日後に、彼女の中学の時の部活の先輩から突然作品を買いたいと連絡が入ったそうだ。先輩からは、「虹の形にできるだろうか」という相談を受けた。愛子は当時、四つ葉を一面に散りばめた作品を作っていたので、四つ葉でなにかの形を表現するということはこれが初めてであった。この依頼が今の愛子の作品に影響を与えることとなった。そして愛子は作品の制作中に大きな綺麗な虹を見たという。素晴らしいシンクロニシティが起こった1つの印象的な出来事であったそうだ。

 このことで未来日記を書くと上手く理想の現実を引き寄せてくれることに気がついた愛子は、また別の内容を未来日記に書くことにした。「突然、作品の海外展開が始まって世界の人から連絡がたくさん来るようになって、忙しすぎて手が回らない!」というような内容を書いたそうだ。それから、これは未来日記に記載していたかは定かではないようだが、SNSのフォロワーがどんどん増えていってほしいという願いも同時に持っていたようだ。自身の作品を、SNSを通じてたくさんの人に見てほしいという願望だったという。

 未来日記を書いて2週間後くらいのタイミングで、突然インスタグラムのフォロワーが増え始めた。インスタグラムをよく見てみると、マルコさんという方が、購入してくれた作品をストーリーで紹介してくれていたのである。マルコさんはイタリア人の男性で、現在ではフォロワーを何百万人も抱えるインフルエンサーである。

 このマルコさんとの出会いは、時を遡ること2016年。1通のメールが愛子の元へ届いた。英語で書かれた、長文メールであった。「自分はイタリア人の中で一番日本に詳しいインフルエンサーです。貴方の個展について私のSNSで紹介させてください」というような自己紹介をされたという。当時の愛子はメディアへの出演が増えており、Twitterなどでも変なおじさんに絡まれていた状況であった。この英語の長文メールを送ってくれた方も愛子と年齢の離れた年上の男性だったので、愛子は最近絡んでくる変なおじさんたちの類だと思って最初はきちんと返信もしなかった。

 その英語の長文メールが届いた少し後に愛子は個展を行っている。2016年に渋谷で開催された「四葉展」だ。この個展にその長文メールを送ってくれたご本人が足を運んだのである。その当時愛子はあまり英語が話せず、マルコさんもイタリアから日本に来たばかりで英語も得意ではない。話はきちんと出来なかったが、身振り手振りでお互い少し話をして、写真を撮って挨拶をしてその時はそこまでだったそうだ。

 時を戻そう。2020年に愛子はクラウドファンディングに挑戦をしていた。幅広く応援コースを用意していたのだが、愛子ふと思い立ってマルコさんにクラファンの応援をしてくれないかと連絡を入れてみた。2016年のときには怪しい人だと思っていたが、個展でもお会いした後に、ちょくちょくTwitterなどで「応援してるよ」や「頑張ってね」など励ましの言葉をよくくれていた。そのため、このころにはマルコさんに対して少しばかり信頼感を感じていたために連絡をしてみたのである。

 長くなるので、続きは次回へ引き継ごう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました