愛子とうさぎ(2)

生澤愛子との生活
Created by Aiko Ikizawa

 さて、今回は愛子が引っ越しをして悲しみに暮れているところから続きを書いていこう。 

 そんな悲しみの底のような毎日を過ごしているところで、愛子に1件の知らせが舞い込むこととなる。なんと、小学生のころにつくったカフェの作品が、全国の小学生たちが使う図工の教科書に掲載されることになったのだ(6個下の妹さんが、この愛子の作品が掲載されている教科書を使っていたという。素晴らしいシンクロ)。

 愛子はことのときのことを、「しばらくして、それがなんなのか、わたしは確信した。心からなにかを好きになったとき、夢中になったとき、そこに愛があると感じたとき、それらに対してまっすぐに向き合ったり表現をしたら、のちに奇跡が起きるのだと。」と言っている。

 いい成績を取ったり、模試で高い偏差値を出したり、周りがやっているから自分もしなきゃいけないと思ってしていたことで結果が出たときとは異なる感情をここで覚える。誰かが自分のために時間をかけて準備して届けてくれた、プレゼントをもらったような感覚になったのである(今考えるとこれは愛子のパラレルセルフからのプレゼントだったのだと思う)。

 愛子が小さい頃に、自分は芸術家になるんだと思った瞬間があった。周囲の大人たちから芸術家やデザイナーは才能がないとなれないんだよ、美大に行ってもプロのアーティストとして生きていけるのは一握りだよと言われたそうだ。才能がないと難しいのかな…挑戦するのはやっぱり怖いな…と当時は思っていた。だが、こんな気持ちになれるのであれば、自分にも可能性があるのではないかと思えたという。誰も理解してくれなくても、タイミングが来れば素晴らしいことが体験できるのではないかと確信できたきっかけとなった。

 (余談だが、大人たちは現実を教えるのではなく、子どもたちの夢をもっと応援してくれてもいいのに。わたしも小さい頃に宝石屋になると大人に話したら、強盗が入るから怖いよと速攻で言われた。そんなの別に小さいころに教えなくてもいいじゃないか。大人になるにつれて現実なんて否が応でも突きつけられるものなのだから。小さいころの意識は純粋なのだから、大人はもっと子どもが持った夢をこぼさないように細心の注意を払うべきである。)

 愛子は学校生活を送りながら、徐々にまた元気になっていく。高校は進学校へ進んだのだが、進学校特有の、良い大学へ行くことが正義であるという価値観に疑問を持ちながら学校生活を送る。ご両親や先生が望むこと、周囲の大多数の同級生たちと同じ道を進む安心感を手に入れるということは、本当は愛子が心から望んでいるものではないと気がつくのである。高校生の時代に大多数と異なる思想や価値観を持ってそれを体現するということは怖いことであるように思える。本当に心から望んでいることを愛子自身が受け入れることには時間がかかったそうだ。受け入れるということは、皆とは異なる道へ進んでいくことを肯定することになるからである。

 物心ついたときから四つ葉が光って見える才能を持つ愛子は、高校3年生の初夏にようやく周囲に発信するようになる。皆と同じ道を進むという安心感を捨てて、自分の進みたい道を進むという決心をすることはどうしようもなく怖かったと愛子は言う。だが、それでもカフェとの間に起こった奇跡が愛子の気持ちを後押ししてくれた。四つ葉のクローバーと一緒に生きていくという決意を愛子はするのである。

 思い描いた夢が本当に叶うのかどうか、不安で不安でどうしようもなかった日々もあったが、カフェが愛子のことを好きなことをして生きていける世界、好きなことを通して繋がっていける世界へと連れて行ってくれた。

「だれかが応援してくれなくても、だれも理解してくれなくても、じぶんが確信できたら、奇跡が起きるし、愛にあふれる世界までたどり着くことができる。奇跡の種は日常の愛しさのなかに実は埋まっていたりする。現代を生きていると、つい大切にすべきものを見失ってしまいそうになることもあるけれど、みんなもわたしも、好きな人やもの、愛しい存在を、大切に守りながら、生きていけますように。」

これが生澤愛子の願いである。

(※)引用元リンク:https://note.com/aikoikizawa/n/n864372dd98a2

コメント

タイトルとURLをコピーしました