愛子とうさぎ(1)

生澤愛子との生活
Created by Aiko Ikizawa

 愛子はうさぎが特別好きである。四つ葉の作品の中でもうさぎをモチーフにした作品が何点かある。彼女のインスタグラムでは愛子がたまたまどこかでお出かけ中のうさぎと飼い主さんと遭遇し、抱っこしている動画も載っている(愛子よりも抱っこされているうさぎの方が喜んでいるようにわたしは感じた)。

 実際にわたしも、愛子からオーダーでうさぎの作品をつくってもらった。上の写真は、愛子がわたしに向けてつくってくれた作品。わたしは絵を買うというのはこの人生でこの作品が初めてである。そういえば思い出したのだが、わたしは幼稚園のころから高校に至るまで、その時代で一番仲の良い友人が必ずうさぎを飼っていた。遊びに行くたびにうさぎに会えていたのだが、今思えば何かしらの布石になっていたのかもしれない。

 愛子がうさぎが特別に好きである理由がいくつかある。愛子の魂は、うさぎをモチーフとして創造主のティアさんが愛子の魂を創り上げた。そのため、うさぎには特別な感情や想いを持っているというのがまず1つの理由である。

 もう1つ、理由がある。愛子がアーティストとして生きていくきっかけを与えてくれたのもうさぎであった。愛子が小学5年生の秋に、小学校に子うさぎがやってきたという。愛子は5年生のときと6年生のときに飼育委員をしていた。グレーベースに白い模様が入ったうさぎは、飼育委員会内の多数決で「カフェ」という名前になった。飼育委員であるので、他の生徒たちと比べると愛子は圧倒的にカフェと触れ合える時間が長かった。

 飼育委員のお世話は当番制だったらしい。放課後だけでなく、土日にも会いに行ったという。土日は学校は休みだったが、飼育当番はかわりばんこでお世話をしていたそうだ。徐々に愛子は自分の当番じゃない日にもカフェへ会いにいくようになる。そして興味深いことに、カフェはラビットフードよりも野菜や草のほうが好きだったようでラビットフードはよく残していたんだとか。やはり人工的に作られたご飯よりも、自然由来のものがいいよね。 愛子がカフェと出会ったのは小学5年生の秋なので、卒業するまで残り1年半しか時間が残っていない。日々カフェと触れ合いながら一緒に過ごせる残りわずかな貴重な時間を大切に過ごしていた。

 学校生活を送る中で、ある時図工の授業で「伝えたい気持ちを箱につめて」というテーマでオリジナルの箱をつくる時間があった。空き箱を使って、好きなようにデコレーションしたり、中に好きな物を詰めるという授業であった。愛子はカフェをモチーフにした作品をつくろうと決めて、夢中で作品づくりに取り組んだ。思い余すことなくカフェの可愛さを表現したいという気持ちから、丁寧に丁寧に、心を込めて作品をつくり上げていった。自分の中にある想いを全て注ぎ込むことのできた、特別な作品となったそうだ。

 小学生高学年くらいになってくると、性別を意識し始めたり、周りの目というのも気にする年齢に差しかかってくる。テストでいい点数を取るということやリレーの選手に選ばれることなど、周りの子たちはそのようなことに関心を向けている最中、愛子の一番の関心事はカフェであった。誰かに認められることよりも、目の前に大好きな存在があったり、夢中になれる物事があるほうがよっぽど幸せなことだと愛子は気付いていたのである。

 愛子は小学校卒業後もカフェに頻繁に会いに行きたいと思っていたが、中学に入る直前に引っ越すこととなった。桜が咲くころに無事に引っ越しを完了し、数ヶ月経ったころにカフェへ会いに行ったところ、カフェはすでにその小学校からいなくなってしまっていた。卒業して数ヶ月で亡くなってしまったのだという。

 愛子はそのころ引越し先でまだ環境に慣れておらず、いつも寂しくて悲しくて、辛い気持ちを抱えていた。そんな中で愛子にとって特別な存在であったカフェまでもいなくなってしまった。様々なことが重なってしまい、愛子はこの時にもう人生を終わりにしてしまおうかと思っていたそうだ。そんな辛い日々を過ごしている中ですぐにまた新たに引っ越しをすることとなり、別の学校に転校することとなった。度重なる環境の変化は、この年齢ではなかなか大変なことだろう。愛子はこの時代に勉強も運動も、それまで出来ていたことが当たり前にできなくなっていく。努力して取り返せるようなものでもなく、大切に持っていたものが手からこぼれ落ちる感覚だっただろう。自身の人生になにが起きているのか分からず日々困惑し、泣きながら過ごしていたそうだ。

 少し長くなってしまったので、続きは次回へ引き継ぐこととしよう。

 

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