人生は意識レベルでできている(12)

生澤愛子との生活

 そのまま1月2月と時が流れ、3月。3月にわたしは愛子と久しぶりにお昼ごはんを一緒に食べる予定を組んでいた。だが、愛子は熱が出てしまいその日は会えなくなる。これも後から分かったことだが、この熱も闇側によって操作されていたことであった。愛子とわたしがまた頻繁に会うようになると闇側にとって不都合だったのだろう。

 そして同じくらいの時期に、かくれんぼパブリッシングという出版社から、本を出版するにあたり愛子に寄稿の依頼が来た。その出版社の代表は、専門学生終わり頃に愛子が所属していた、起業家を目指す若者が集まるコミュニティをきっかけに以前SNSでメッセージのやり取りをしていた方であった。メールの文章からにじみ出る人柄や、今回なぜ愛子に依頼をしたのかという理由、かくれんぼパブリッシングという出版社の名前の由来などが丁寧な言葉で紡がれており、たくさん人の人生がより良くなっていきそうな本になりそうだという予感がしたので、喜んで引き受けた。

 4月に入り、愛子は金銭面への不安が、意識レベル12の当時の辛い記憶とリンクするような感覚を覚えて何かしら動く必要があると思っていた。そろそろ愛子の中にあることを正直に言うべきだと感じ始めるのである。まだ抵抗があったものの、勇気を出して、前世のことや今の現代アートが置かれている境遇についてSNSで発信をした。すると、何名かが反応する中で1人の方のメッセージが目に留まった。この頃愛子は自分の内側にあってやれていないことや言えていないことを外に出していくことで、前に進めるということを直感的に思っていた。自分の中にある感情を内に留めるのではなく外に出すことで、愛が循環していけると思ったのである。

 スムーズに話が進み、5月に愛子は個展を開くこととなった。この頃にまたわたしと愛子は頻繁に会うようになる。様子を見ながらまたキネシオロジーテストをするようになっていったのであった。この頃愛子の中で意識がどんどん変化をしていき、個展初日、愛子の意識レベルは980であった。この個展期間中に色んな人と会う中で、理性を使って頑張らなくても縁のある人とは繋がれると感じることができた。加えて、愛子が今までの人生でトップ5に入るくらい感銘を受けた本の著者の方も個展に足を運び、愛子がジョージア・オキーフであることを書いたキャプションを読み「ジョージア・オキーフの作品と同じ感じがする」と言ってくれたのであった。こういった1つ1つの出来事から愛子は新しい意識が芽生え、個展最終日には意識レベルが985となり、初日からこの短期間で5も上がったのである。

 個展の準備期間中には、愛子がたまたま母校である専門学校の理事長を見かけて声を掛けた。その理事長は愛子のSNSをフォローしてくれていたので、声を掛けてみたのであった。すると母校の授業で少し話をしてほしいとお願いをされた。20〜30名くらいの前でカジュアルに話をしたのだが、後からその授業を聞いた生徒の方からSNSで「お話を聞いて涙が出そうになった」というメッセージが届いた。

 そして個展終了後には、個展に来てくださった方の紹介で、愛子の作品を買いたいという男性と知り合った。その方は自分用とプレゼント用に作品を買いたいと思っていたのだが、実際に愛子と直接会って作品を見た瞬間にその方が泣き始めた。その方も、なぜ涙が出てきたのか分からないという。愛子は、この方が愛子の作品を見て意識の統合が進み、自然と涙が出たのではないかと考察をしている(実際にキネシオロジーテストではその考察に対して合っているか確認をしたらYESと出た)。この方は結局プレゼント用ではなく、全て自分用として作品を購入してくださったのだった。

 愛子はこの頃、愛子の作品や愛子が発した言葉が、相手の心を以前よりも大きく揺さぶっていることに気が付いた。これまでも講演などをする場面はあり、ポジティブに受け取ってもらえることは多かったものの、意識レベルが900台後半になってからより相手の心により深く届いている感覚を持ったのである。誰かに何かを伝えたい時、言葉や技術が一番大切だと思ってしまいがちだが、実はその時の意識のほうが大切なのではないかと愛子は思ったのだった。

 個展が終了してから、愛子とわたしはたまたま道端でばったりと会う機会があった。わたしは買い物に行こうとしており、愛子は買い物から帰ってくるタイミングであった。愛子は大きな重たい観葉植物を持ち、ヨタヨタと歩いていたのをたまたま見つけ、わたしは愛子の家まで観葉植物を運ぶことを手伝ったのであった。愛子からしても「誰か手伝ってくれないかな」と思っていたので、抜群のタイミングであったのだ。

 こうやってタイミングよく会えたのも偶然じゃない気がすると愛子は感じ、すぐにキネシオロジーテストで確認をした。愛子はわたしが引っ越した後も、前の家で同棲をしていた恋人と付き合い続けていたことがずっと心に引っかかっていたのだが、キネシオロジーテストでまず「パラレルセルフがゆりに対して言いたいことがある」ということを聞き、YESという反応が出る。テストを続けていくうちに、わたしのパラレルセルフがわたしに対して、今付き合っている恋人と別れてほしいと思っていること、そしてわたしの誕生日までに別れないとプロジェクトメンバーから除外されることが分かったのである。

 わたしはなぜか、このテストを通してその時の彼と別れることを決意する。潜在意識で、このプロジェクト以上に大切なことはないと気付いていたのかもしれない。あんなにも恋人と別れることが怖かったのに、わたしはその日の夜のうちに別れ話をして、愛子に報告をする。愛子はこの唐突なわたしの行動に非常に驚くのであった。(続く)

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